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【コラム㉖】アスベスト入りスレートか確認したい|見分け方と費用

工場の屋根を見上げて「あの波形スレート、アスベストが入っているのではないか?」と気になったことはありませんか?

改修を業者に相談したら「まず調査が必要です」と言われてしまい、そこで話が止まってしまった方もいるかもしれません。2006年より前に建てられた工場や倉庫の屋根の多くで、アスベストを含んだ波形スレートが使われている可能性があります。

この記事では、「自分の建物が今どの状態か?」「次に何をすればいいのか?」がわかるように確認方法と対処の判断ができるところまでを目標に整理しました。

アスベスト入りスレート(石綿含有成形板)の基礎知識と主な種類

以前にアスベストがスレートに使われた理由は単純です。セメントに混ぜると強くなり、燃えず、しかも安く作れました。屋根材として長く使われてきた製品も少なくありません。

種類は大きく二つです。住宅の屋根に多い平板スレートと工場や倉庫に使われる波形スレートです。波形は屋根に大波、壁に小波がよく使われます。

分類上は「レベル3(非飛散性)建材」です。セメントで固められている間は繊維が飛び散りにくく、吹付けアスベスト(レベル1)とは危険度がまったく違います。

築年数と製造時期から判断するアスベスト含有の可能性

わかりやすい目安は建てられた年です。

国内では2004年に製造が実質的に禁止され、2006年9月に全面禁止となりました。2006年より前の建物なら含んでいる前提で動いて損はありません。

特に1970年代から1990年代の製品は含有率が高い傾向にあります。この時期に建った工場や倉庫の屋根は含有しているものとして調査をしたほうがいいかもしれません。

▼ 表1:製造時期とアスベスト含有の目安
時期 状況・目安
1970年代〜1990年代 含有率が高い傾向。含有しているものとして調査
2000年代前半 メーカーによってはすでに無石綿品へ切り替え。同じ築年数でも中身が違うことがある
2004年 製造が実質的に禁止
2006年9月 全面禁止

難しいのは2000年代前半です。メーカーによってはすでに無石綿品へ切り替えていたため、同じ築年数でも中身が違うことがあります。その場合でも設計図書に製品名が残っていれば、国土交通省の「石綿含有建材データベース」で無料照会できます。

目視や図面での判別限界と有資格者による事前調査の重要性

アスベストが含まれているかどうかは、残念ながら見た目では判別できません。

専門家でも同じで、色も形も含有品によく似た無石綿品があるので判断ができないことがよく起こります。図面が残っていれば製品名を追えますが、築40年、50年の建物では図面そのものが見当たらないこともよくあります。施工段階で別の製品に差し替わっていた例もありますし、表面の刻印は摩耗して読めないことが多いです。

そのため、最後は分析に頼ることになります。サンプルを採って顕微鏡で確認すれば有無と含有率がはっきりします。調査しないとわからないために自己判断で工事を始めないほうがいいでしょう。

【2023年改正】解体・改修時の事前調査と報告義務の全体像

2023年10月1日から解体・改修の前にアスベスト含有建材の有無を調べることが、すべての工事で義務になりました。調査は有資格者が行います。

さらに一定の規模を超える工事では、結果を「石綿事前調査結果報告システム」から労働基準監督署へ電子報告しなければなりません。対象になるのは、建築物の解体で工事部分の床面積の合計が80平方メートル以上、建築物の改修で請負代金が100万円以上、工作物の解体・改修で請負代金が100万円以上の工事です。含有していなかった場合も報告は必要です。加えて2026年1月からは、煙突やボイラー、配管設備といった特定の工作物について、事前調査を有資格者が行うことが義務づけられました。

▼ 表2:電子報告の対象になる工事
工事の種類 報告が必要なライン
建築物の解体 工事部分の床面積の合計が80平方メートル以上
建築物の改修 請負代金が100万円以上
工作物の解体・改修 請負代金が100万円以上

調査費用は5万円から30万円ほどが相場です。負担に感じる金額ですが、確認せずに工事へ進み、着手後に判明したときの費用のほうがはるかに大きくなることがあります。

スレート屋根の飛散リスクと放置した場合の危険性

アスベストを含む製品が屋根に載っているだけの状態で健康被害が出ることはまずありません。

しかし、問題はその安心感のまま何年も放置してしまうことです。台風で割れた、経年でひび割れたなどで破断面から繊維が露出すると、雨風によって少しずつ運ばれていきます。工場であれば、その真下で毎日従業員が働いていることになります。

実害はアスベストだけでもありません。雨漏りが始まれば下地の鉄骨が錆び、在庫や機械が濡れます。そうなってしまえば、屋根を直すだけでは済まなくなってしまいます。

劣化状況に応じた3つの改修工法:塗装・カバー工法・葺き替え

改修の方法は大きく三つで、劣化の程度と「あと何年使うか」が判断基準になります。まず全体像をつかむために、戸建て住宅を想定した費用感を示します。

▼ 表3:塗装・カバー工法・葺き替えの費用相場と工期の比較(戸建て住宅を想定)
工法 費用相場 工期 向いているケース 注意したい点
塗装 15〜30万円程度 1〜2週間 色あせや軽いひび割れの段階 飛散が止まるわけではない
カバー工法 80〜180万円程度 1〜2週間 中程度の劣化で操業を止めたくない 重量が増え、将来2層分の撤去費がかかる
葺き替え 150〜300万円程度 2〜4週間 建物をこの先も長く使う 費用が最も高く、工期も長い

上の金額は戸建て住宅を想定した目安で、工場や倉庫では屋根面積が大きくなる分だけ上振れします。そのうえで、それぞれの工法には次のような特徴があります。

塗装は比較的安価で工期も短く、劣化の度合いが色あせや軽いひび割れの段階なら選べますが、塗ってもアスベストの飛散が止まるわけではありません。中程度以上に傷んでいるならカバー工法か葺き替えのどちらかがお勧めです。

カバー工法のメリットと将来的な二重撤去コストのリスク

カバー工法が選ばれる理由ははっきりしています。

既存の屋根を剥がさないので撤去費と処分費がまるごと不要になるからです。工期も1〜2週間程度で、操業を止めずに進められる場合もあります。

アスベスト含有スレートの撤去・処分費用相場とコスト要因

次は撤去する時の費用や方法についてご紹介します。

アスベスト建材は「特別管理産業廃棄物」に当たり二重に梱包したうえで、受け入れ可能な管理型処分場まで運ばなければなりません。

内訳は撤去・解体費が1平方メートルあたり3,000円前後、これに運搬費が乗り処分費が1トンあたり15,000円から25,000円程度です。住宅30坪程度なら総額50万円から100万円、工場や倉庫で屋根面積が100平方メートルを超えると100万円から200万円を上回ることも珍しくありません。

▼ 表4:アスベスト含有スレートの撤去・処分費用の目安
項目 費用の目安
撤去・解体費 1平方メートルあたり3,000円前後
処分費 1トンあたり15,000円から25,000円程度
総額(住宅30坪程度) 50万円から100万円
総額(工場や倉庫で屋根面積が100平方メートル超) 100万円から200万円を上回ることも

補助金や助成金は使える?アスベスト対策費用の軽減策

次はスレートの除去に対して補助金や助成金についてです。

レベル3建材は通常時の飛散リスクが低いため、吹付けアスベストより優先度が下がります。調査費用を一部補助する自治体はありますが対象は限られています。

ただ、見方を変えると方法はあります。屋根の改修は「耐震改修」「省エネ・断熱改修」「防災対策」といった枠で補助対象になることがあります。遮熱性のある屋根材を選ぶ、あわせて太陽光発電を載せる、といった組み立て方です。

よくある質問

Q
見た目でアスベスト入りかどうか分かりますか?

A

分かりません。含有品とよく似た無石綿品があり、専門家でも外観だけでは判断できません。設計図書に製品名が残っていれば国土交通省のデータベースで照会できますが、記録がない場合は分析による調査が必要になります。

Q
調査をしないまま工事を始めるとどうなりますか?

A

解体・改修の前の事前調査は法令上の義務です。行わずに着手すれば法令違反になるうえ、施工中にアスベストが判明すれば工事を止めて計画を組み直すことになり、工期も費用も膨らみます。

Q
含有していると分かったら、すぐ撤去しなければいけませんか?

A

撤去が義務づけられているわけではありません。割れや欠けがなく屋根に載っているだけの状態であれば、飛散のリスクは低いとされています。ただし劣化が進むと状況が変わるため、あと何年その建物を使うかを踏まえて改修の時期を決めておく必要があります。

Q
カバー工法にすれば、アスベストの問題は解決しますか?

A

その時点での飛散リスクは抑えられますが、古い屋根材は下に残ったままです。将来建て替えるときには新旧2層分の撤去費がかかります。10年以内に建て替える予定があるかどうかで判断は変わります。

Q
工場を稼働させたまま工事できますか?

A

工法によります。カバー工法は既存の屋根を剥がさないため、操業を続けながら進めやすい方法です。葺き替えは撤去の工程が入るため、区画を区切って段階的に進めるなどの調整が必要になります。

まとめ:建物の将来を見据えた最適な意思決定フロー

検討を始めた時の手順についてまとめました。


  1. 含有の有無を確定させます。ここが決まらないとその先の見積もりがすべて仮の数字になります。

  2. その建物をあと何年使うかを決めます。10年以内に建て替えるならカバー工法、長く使うなら葺き替え、というように答えが変わります。

  3. 劣化の状況と屋根に載せられる重さを確認します。

  4. 補助金の枠に乗せられないかを工事前に確認します。

  5. 調査から施工まで一貫して相談できる相手を探します。調査会社、設計、施工会社がばらばらだと判断のたびに話が止まり、結論が出るまで何か月もかかってしまう時があるので注意してください。

屋根は判断を先送りするほど選べる手が減っていきます。まだ迷っている段階でかまいませんので一度現状を見てもらうところから始めてみてください。