【コラム㉕】工場・倉庫の屋根工事で足場は必要?足場の種類・費用・工事への影響
屋根の見積書を見て、足場の金額に驚いたという声をよく聞きます。屋根そのものの工事ではないのに、全体の費用のなかで小さくない割合を占めるためです。足場を省けないかという相談を受けることも珍しくありません。
結論からいえば、屋根工事の足場は削れる項目ではありません。法令上の要求であると同時に、工事の品質と作業者の安全を支える前提だからです。ただし、費用を無駄にしない考え方はあります。この記事では、工場や倉庫の屋根工事で足場が必要になる根拠、足場の種類と選び方、費用の考え方、工事全体への影響を整理し、限られた予算を有効に使うための進め方まで解説します。
工場・倉庫の屋根工事に足場は必要か
法令が求める安全対策
労働安全衛生規則では、高さ2メートル以上の場所で作業を行う場合、作業床を設けることが原則とされています。作業床を設けることが難しい場合には、墜落制止用器具を使用させるなどの措置が求められます。工場や倉庫の屋根は、住宅よりもはるかに高い位置にあることがほとんどで、足場や作業床なしで工事を行うことは想定されていません。
建設業の死亡災害のうち、およそ4割を墜落と転落が占めるという状況を背景に、規制は近年さらに強化されています。
| 施行日 | 改正の内容 |
|---|---|
| 2023年10月1日施行 | 事業者が足場の点検を行う際、点検者を指名することが義務化されました |
| 2023年10月1日施行 | 足場の組立て、一部解体、一部変更の後の点検で、指名した点検者の氏名を記録し保存することが義務化されました |
| 2024年4月1日施行 | 幅が1メートル以上の箇所で足場を使用するときは、本足場を使用しなければならないと規定されました。つり足場を使用する場合や、障害物により本足場を設けることが困難な場合は例外となります |
足場がないと工事の品質も落ちる
安全面だけの話ではありません。安定した作業床がない状態では、作業姿勢が不自然になり、施工の精度が下がります。屋根工事はビスの締め付け、防水層の重ね、板金の納まりといった細部の積み重ねで仕上がりが決まるため、作業環境の良し悪しがそのまま仕上がりに反映されます。
また、屋根に上がるための昇降経路や、資材の運搬経路としても足場は機能します。作業者が無理な姿勢で資材を持ち上げる状況を避けられることは、工期の短縮にもつながります。
屋根工事で使われる足場の種類
足場にはいくつかの種類があり、建物の高さ、敷地の条件、工事の内容によって使い分けます。それぞれの特徴を押さえておくと、見積書の内容を理解しやすくなります。
| 種類 | 特徴 | 適した条件 |
|---|---|---|
| くさび緊結式足場 | 部材をハンマーで打ち込んで組む方式。組立てが早く、作業床が確保される。現在の主流 | 中低層の建物全般。屋根改修や外壁工事に広く使われる |
| 枠組足場 | 鋼管を溶接した枠を積み上げる方式。強度が高く、大規模で高さのある現場に向く | 高さのある工場や倉庫、大規模改修 |
| 単管足場 | 鋼管を金具でつなぐ方式。自由度が高いが作業床が確保しにくい | 狭い敷地や、部分的な工事 |
| つり足場 | 上部から吊り下げて作業床をつくる方式 | 地上から組めない場所、橋梁や大空間の下部 |
| 屋根足場 | 勾配のある屋根の上に設ける足場 | 勾配が急な屋根での作業 |
| 高所作業車 | 足場を組まずに作業位置まで上がる。組立て解体が不要 | 短時間の点検や部分補修。走行スペースが要る |
工場や倉庫では、高さと屋根面積の大きさから枠組足場やくさび緊結式足場が選ばれることが多くなります。ただし、敷地内に配管、タンク、屋外設備が並んでいる現場では、足場を組める位置が限られ、部分的につり足場や高所作業車を組み合わせる計画になることもあります。
どの足場を選ぶかは、費用だけで決められるものではありません。建物の形状、周囲の障害物、工事内容、工期のすべてを踏まえて計画されるものだと理解してください。
足場費用はどのように決まるのか
基本は面積に単価を掛ける
足場費用は、足場の架設面積に平方メートルあたりの単価を掛けて算出するのが基本です。架設面積は、足場を組む水平方向の長さに、足場の高さを掛けて求めます。屋根工事の場合、屋根の高さより少し上まで足場を立ち上げる必要があるため、建物の高さそのものよりやや大きな数値になります。
平方メートルあたりの単価は、地域や足場の種類、養生シートの有無によって変わります。一般的な住宅工事では800円から1200円程度が目安として示されることが多いのですが、工場や倉庫ではこの範囲に収まらない場合があります。
工場・倉庫で費用が変動する要因
産業用建築物の足場は、住宅とは異なる条件が加わります。見積もりの金額に幅が出る理由は、次のような点にあります。
建物の高さ:高くなるほど部材の量と組立ての手間が増え、単価も上がる傾向があります
敷地の条件:屋外設備、配管、タンク、資材置き場などが足場の設置位置を制約します
地盤と養生:フォークリフトや車両が通る動線を確保しながら組む必要があります
稼働中かどうか:作業時間の制約があると、工程が分割され効率が下がります
飛散防止の要求水準:粉じんや資材の飛散を防ぐ養生の程度によって費用が変わります
積み下ろしと搬入経路:大型車が接近できない現場では、運搬に手間がかかります
足場が工事全体に与える影響
足場は費用の項目としてだけでなく、工期と操業への影響という形でも工事全体に関わってきます。
工期に占める割合
足場の組立てと解体には、それぞれ日数がかかります。屋根工事そのものの日数に、この前後の日数が加わることになります。屋根面積が大きい工場では、組立てだけで数日を要することもあります。見積もりの工期を確認するときは、足場の設置と撤去を含んだ日数かどうかを確かめてください。
操業と動線への影響
足場は建物の外周に組まれるため、搬入口や通路にかかることがあります。トラックの接車位置、フォークリフトの動線、非常口の確保について、事前に打ち合わせておかないと、工事が始まってから業務が回らなくなります。
足場の計画段階で、どの面をいつ組むのか、どの出入口をいつ使えなくするのかを工程表に落とし込んでおくことが、操業への影響を最小限に抑える鍵になります。
安全管理の範囲が広がる
足場が組まれている期間中は、工事関係者だけでなく、従業員や来訪者も足場の近くを通ることになります。立入禁止区画の設定、頭上の養生、夜間の施錠といった管理が必要です。工事業者側の責任範囲と、発注者側で対応すべき範囲を明確にしておくことをおすすめします。
足場の費用を無駄にしないための考え方
足場は削れません。であれば、一度組んだ足場をどれだけ活かすかという発想に切り替えるのが合理的です。
屋根と外壁の工事をまとめる
最も効果が大きいのがこれです。屋根の改修と外壁の塗装や張り替えを別々の年度に行えば、足場費用は2回かかります。同時に行えば1回で済みます。数年以内に外壁にも手を入れる予定があるのなら、まとめて計画するだけで足場費用の1回分がそのまま浮きます。
付帯工事を同じ機会に済ませる
屋根に上がる機会でなければできない工事は、屋根本体以外にもあります。
- 換気棟やベンチレーターの設置
- 雨樋の交換や補修
- 屋根上の不要な設備、架台、配管の撤去
- 天窓や採光部材の交換
- 避雷設備や屋外配線の点検
- 太陽光発電設備の設置に向けた下地の整備
これらを後日あらためて行えば、そのたびに足場が必要になります。屋根改修の計画段階で、屋根まわりに関わる要望をすべて洗い出しておくことが、長い目で見た費用の節約につながります。
工事前に屋根の状態を正確に把握する
着工後に想定外の劣化が見つかると、工事内容が変わり、足場を組んだまま工期が延びることになります。事前に屋根の状態を正確に把握しておけば、こうした追加を減らせます。
屋根工事の進め方と足場の位置づけ
足場をどの段階で計画するかによって、工事全体の進めやすさが変わります。標準的な流れは次のとおりです。
相談と現状のヒアリング:雨漏り、結露、暑さ、雨音など、困っている内容と建物の概要を伝えます。
ドローンによる屋根点検:屋根に上がらずに劣化状況を確認します。この段階で工事範囲のおおよその見当がつきます。
現地調査:敷地の条件、搬入経路、周囲の障害物、足場を組める位置を確認します。足場計画の根拠となる情報を集める段階です。
工事内容と足場計画の提案:屋根の工法、使用する製品、足場の種類と範囲、工程を含めた提案を受けます。
見積もりの確認:足場費用が別項目になっているか、工期に組立てと解体が含まれているか、養生の範囲はどこまでかを確認します。
工程調整:操業への影響、搬入口の使用制限、作業時間帯を打ち合わせます。
施工と完了確認:足場を解体する前に、仕上がりの確認を行います。解体後では手直しに再度足場が必要になります。
ヤマトC&Cの一貫体制
ヤマトC&C株式会社は、創業70年以上にわたり屋根材を手がけてきた専門メーカーです。工場、倉庫、体育館といった産業用建築物を主なフィールドとし、開発から製造、販売、施工までを一貫体制で担っています。
屋根材のメーカーが施工まで担うことには、足場の計画においても意味があります。どの工法でどれだけの作業日数がかかるか、資材をどう揚重するか、どの範囲に足場が必要かを、製品の特性から具体的に組み立てられるためです。製品の販売と施工が別々の会社に分かれていると、この調整に手間と時間がかかります。
| 製品・サービス | 内容 |
|---|---|
| ヤマトカバールーフ650 | 既存屋根を撤去せずに施工でき、廃材が出ず工期を短縮できるカバールーフ工法材 |
| ファイバーコルゲート | 独自工法による波形スレート。工場や倉庫の屋根と外壁に対応 |
| ソフランスレート | 裏面に硬質ポリウレタンフォームを結合した断熱タイプの波形スレート |
| 換気棟 | 屋根の改修と同時に設置することで、足場費用を重ねずに換気を改善 |
| ロックオン金具/キャッチオン金具 | 屋根改修と太陽光設備の設置を同じ機会にまとめる |
| ドローン屋根点検 | 足場を組む前に屋根の状態を把握し、工事範囲の精度を高める |
屋根工事の足場に関するよくある質問
まとめ:足場は削るものではなく、まとめて活かすもの
屋根工事における足場は、法令が求める安全対策であり、施工の品質を支える作業環境でもあります。費用を抑えたいという理由で仕様を落とせる部分ではなく、近年の法令改正によってその傾向はさらに強まっています。
費用を有効に使う道は、足場を削ることではなく、一度組んだ足場でできることを増やすことにあります。屋根と外壁をまとめる、換気棟や雨樋の工事を同じ機会に済ませる、着工前にドローン点検で工事範囲を固めておく。この3つを実行するだけで、長い目で見た支出は確実に変わります。
ヤマトC&C株式会社は、開発から製造、販売、施工までを一貫して担う屋根材の専門メーカーです。屋根の改修をご検討の際は、工事内容と足場の計画を一体でご提案します。まずはドローンによる屋根点検で、現在の状態を確認するところからご相談ください。



