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【コラム㉜】工場の屋根の遮熱塗装|効く屋根と効かない屋根

夏場になると二階の事務所や作業スペースが昼過ぎには蒸し風呂のようになる。
塗装業者から遮熱塗料をすすめられたものの、本当に涼しくなるのか判断がつかない。
そんな状態で見積書を眺めていませんか。

遮熱塗装は、はっきり効く屋根と、塗ってもほとんど変わらない屋根に分かれます。同じ塗料を同じ手順で塗っても、建物の条件が違えば結果は変わってきます。

この記事では、遮熱塗装で室温が実際に何度下がるのか、どんな屋根なら効くのかを、工場・倉庫の屋根を前提に整理します。塗ると決める前に確かめておきたいところまでお伝えします。

01遮熱塗装で、室温は何度下がるのか

塗料メーカーの実測では、遮熱塗装をした屋根の表面温度が、塗る前より15度から20度ほど低くなった例が公表されています。数字だけ見ると期待したくなるところですが、この温度は屋根そのものの温度です。

室内の温度で見ると、下がり幅は2度から3度あたりに落ち着くことが多くなります。室温を決めているのは屋根だけではないからです。機械や照明からの発熱、開口部から入る熱、換気と空調の効き方が重なって、いまの室温ができています。

屋根の表面温度

15〜20度

塗料メーカーの実測で公表されている例

室内の温度

2〜3度

下がり幅が落ち着くことが多い範囲

ここで2度から3度を小さいと見るか、大きいと見るか。判断の材料になるのが、2025年6月1日に施行された改正労働安全衛生規則です。暑さ指数(WBGT)28度以上または気温31度以上の環境で、連続1時間または1日あたり合計4時間を超える作業がある場合、事業者には熱中症のおそれがある人を把握する報告体制の整備と、対応手順の作成・周知が義務づけられました。違反すれば罰則の対象になります。

▼ 改正労働安全衛生規則(2025年6月1日施行)の要点
対象となる環境 暑さ指数(WBGT)28度以上または気温31度以上
対象となる作業 連続1時間または1日あたり合計4時間を超える作業
事業者の義務 熱中症のおそれがある人を把握する報告体制の整備、対応手順の作成・周知
違反した場合 罰則の対象

02遮熱と断熱は、受け持つ役割が違う

遮熱は、日射に含まれる赤外線を塗膜の表面ではね返し、屋根が受け取る熱そのものを減らす働きです。断熱は、受け取ってしまった熱が室内側へ伝わる速度を落とす働きです。入口で減らすか、途中で遅らせるかの違いがあります。

▼ 遮熱と断熱の違い
項目 遮熱 断熱
働き 日射に含まれる赤外線を塗膜の表面ではね返し、屋根が受け取る熱そのものを減らす 受け取ってしまった熱が室内側へ伝わる速度を落とす
熱への作用 入口で減らす 途中で遅らせる

工場や倉庫で多い波形スレートは、厚みが6ミリ前後しかありません。断熱材が入っていない屋根では、日射で温まった屋根面がそのまま輻射の発生源になり、真下の空間を暖めます。この状態であれば、入ってくる熱を減らす遮熱塗装の効き目は出やすくなります。

反対に、天井裏に断熱材が入っている建物では、熱の伝わりがすでに抑えられています。そこへ遮熱塗装を重ねても、室温の差として感じ取れるほどにはなりにくいところです。

もうひとつ、夜の時間帯にも違いが出ます。日中に屋根へ蓄えられた熱は、日が落ちてからも下へ放射され続けます。遮熱塗装で蓄熱が減れば、この放射が収まるのが早くなります。夜勤のある現場では、日中の最高温度より、この夕方以降の変化のほうを実感しやすいという声もあります。なお、冬場の結露は熱の入り方とは別の話で、こちらは断熱と換気の側で考える問題です(工場・倉庫の結露対策|屋根・天井に水滴が発生する原因と改善方法)。

03遮熱塗装が効く屋根、効きにくい屋根

ここまでの内容を、建物の条件ごとに整理します。ご自身の工場がどこに当てはまるかを見てみてください。

▼ 条件別に見た、遮熱塗装の効きやすさ
屋根と建物の条件 効き方 理由
断熱材のない波形スレート・折板 大きい 屋根面の熱が、そのまま下の空間へ放射されている
既存の色が濃い、または汚れている 大きい いまの日射反射率が低いぶん、差が出やすい
天井裏に断熱材が入っている 小さい 熱の伝わりがすでに抑えられている
溶解炉や乾燥炉など内部の発熱が大きい 感じにくい 室温を決めているのが屋根ではない
熱気の抜け道がない 小さい 入る熱を減らしても、上部に滞留したままになる
割れや雨漏りが出ている 対象外 塗る前に補修と、塗って持つ屋根かの判断が要る

※建物の規模、天井の有無、稼働の状況によって変わります。考え方の目安としてご覧ください。

04塗料選びで差がつく3つの点

1規格に適合した製品かどうか

屋根用の遮熱塗料には、JIS K 5675「屋根用高日射反射率塗料」という規格があります。日射反射率や耐久性の品質がここで定められています。あわせて日本塗料工業会の自主管理制度では、日射反射率に応じた星の数が製品ごとに示され、室内へ入ってくる熱の割合を表す日射侵入比という数値でも比べられます。見積書に塗料名しか書かれていない場合は、製品名からこの表示を確認してみてください。

2色をどこまで明るくできるか

遮熱顔料の性能より、色そのものの影響が大きくなる場面があります。同じ塗料でも、濃いグレーと明るいグレーでは反射率がはっきり違います。住宅では街並みとの兼ね合いで濃い色になりがちですが、工場や倉庫は景観の制約が少なく、明るい色を選びやすい建物です。近隣への反射光と汚れの目立ち方だけ確認しておけば、選択肢は広く取れます。

3汚れにくさと、塗り替えまでの年数

遮熱塗装の効果が数年で鈍ったという話の多くは、塗膜に積もった汚れが原因です。ほこりやすすが反射面を覆えば、そのぶん反射率は落ちます。低汚染タイプを選ぶか、定期的に屋根を洗うかで、この落ち方は変わります。塗膜の寿命は10年前後が目安になりますので、その間どれだけ性能を保てるかという見方で製品を比べてみてください。

▼ 塗料選びのチェックポイント(早見表)
見るポイント 確認すること
1. 規格 JIS K 5675への適合、日本塗料工業会の星の数、日射侵入比
2. 色 どこまで明るくできるか、近隣への反射光と汚れの目立ち方
3. 汚れにくさ 低汚染タイプか、塗膜の寿命(10年前後)のあいだ性能を保てるか

05費用の上乗せ分と、回収の考え方

遮熱塗料の単価は、同じ樹脂グレードの一般塗料と比べて1平方メートルあたり数百円ほど高くなるのが目安です。屋根面積1,000平方メートルの建物であれば、数十万円の上乗せという計算になります。足場、高圧洗浄、下地補修といった工程は遮熱かどうかで変わりませんから、増えるのは塗料代を中心とした部分です。

▼ 遮熱塗装にしたときの費用の変わり方
遮熱かどうかで変わらない工程 増える部分
足場・高圧洗浄・下地補修 塗料代を中心とした部分
1平方メートルあたり数百円ほど(1,000平方メートルで数十万円)

この前提があるので、塗り替えの時期が来ている屋根であれば、遮熱にする判断は比較的しやすくなります。反対に、塗膜がまだ持っている屋根に遮熱だけを目的として足場を組むと、足場代が丸ごと上乗せになり、回収は遠のきます。

06塗装だけで足りないときの打ち手

現地を見たうえで、塗装では届かないと判断する屋根もあります。その場合に検討するのは、次の2つです。

ひとつは、熱の出口をつくることです。換気棟やルーフファンで屋根頂部から熱気を抜けば、遮熱塗装と組み合わせたときの下がり幅が大きくなります。

もうひとつは、屋根そのものを断熱性のあるものへ更新することです。ヤマトC&Cのヤマトカバールーフ650は、既存の屋根を撤去せずに上から施工するカバールーフ工法の製品で、高断熱と高強度をあわせ持っています。廃材が出ず、稼働を止めずに進めやすい工法です。新築や葺き替えでは、裏面に硬質ポリウレタンフォームを結合した断熱タイプの波形スレート、ソフランスレートという選択肢もあります。カバー工法と葺き替えの違いは、カバールーフと葺き替えの違いとは?費用・工期・選び方を徹底比較で比べています。

▼ 屋根を断熱性のあるものへ更新する場合の選択肢
製品 場面 特徴
ヤマトカバールーフ650 カバールーフ工法 既存の屋根を撤去せずに上から施工。高断熱と高強度、廃材が出ず、稼働を止めずに進めやすい
ソフランスレート 新築・葺き替え 裏面に硬質ポリウレタンフォームを結合した断熱タイプの波形スレート

どの方法を選ぶにしても、出発点は屋根の現状です。ヤマトC&Cではドローンによる屋根点検に対応しています。屋根に上がらずに屋根面全体を撮影できるため、換気部材の状況や割れ、ボルトの錆まで画像で確認できます。

工場の屋根の遮熱塗装に関するよくある質問(Q&A)

Q
遮熱塗装をすると、工場の室温は何度くらい下がりますか?
A

屋根の表面温度は塗る前より15度から20度ほど低くなった例が公表されていますが、室内の温度では2度から3度あたりに落ち着くことが多くなります。室温は機械や照明の発熱、開口部から入る熱、換気と空調の効き方も重なって決まるためです。

Q
遮熱と断熱はどう違うのですか?
A

遮熱は日射に含まれる赤外線を塗膜の表面ではね返し、屋根が受け取る熱そのものを減らす働きです。断熱は受け取ってしまった熱が室内側へ伝わる速度を落とす働きです。入口で減らすか、途中で遅らせるかの違いがあります。

Q
遮熱塗装が効きやすいのはどんな屋根ですか?
A

断熱材のない波形スレートや折板で、既存の色が濃い、または汚れている屋根です。反対に、天井裏に断熱材が入っている建物や、溶解炉・乾燥炉など内部の発熱が大きい建物、熱気の抜け道がない建物では効果を感じにくくなります。

Q
遮熱塗料は一般塗料よりどれくらい高くなりますか?
A

同じ樹脂グレードの一般塗料と比べて、1平方メートルあたり数百円ほど高くなるのが目安です。屋根面積1,000平方メートルなら数十万円の上乗せです。足場や高圧洗浄、下地補修は変わらないため、塗り替えの時期が来ている屋根なら遮熱にする判断はしやすくなります。

Q
遮熱塗装だけで足りない場合はどうすればよいですか?
A

換気棟やルーフファンで屋根頂部から熱気を抜く方法と、屋根そのものを断熱性のあるものへ更新する方法があります。既存の屋根を撤去せずに施工できるヤマトカバールーフ650や、新築・葺き替え向けの断熱タイプの波形スレート、ソフランスレートという選択肢もあります。

07まとめ

遮熱塗装で下がるのは、まず屋根の表面温度です。室温としては2度から3度あたりが現実的な幅で、その差が効いてくるかどうかは建物の条件で決まります。

断熱材のない波形スレートで、色が濃く、熱気の抜け道がある建物なら、費用の上乗せに見合う結果が出やすくなります。天井裏に断熱材があったり内部の発熱が大きかったりする建物では、塗料を変えるより先に換気や屋根材そのものを考えたほうが近道です。

自社の屋根がどちらなのかは、図面と写真があればおおよそ見当がつきます。塗装の見積書が手元にある段階でかまいませんので、まず屋根の状態を確かめるところから始めてみてください。